【2026年最新版】職場と日常で実践する熱中症対策ガイド

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熱中症は屋内でも起こる

猛暑が続く中、熱中症はどこでも起こり得る身近な危険です。「熱中症は屋外で起こるもの」と思われがちですが、実際には屋内でも多く発生しています。また、熱中症は重症化すると命に関わることもあります。

厚生労働省の確定値によると、2025年の職場での熱中症による死傷者数(死亡と休業4日以上の合計)は1,803人と前年から約43%増加し、統計開始以来最多となりました。増加の背景には記録的な猛暑があります。気象庁によると、2025年夏(6〜8月)の平均気温は基準値からの偏差が+2.36℃と統計開始以来最高を記録しており、厚生労働省はこれが死傷者数増加の一因になったと推測しています。一方で死亡者数は19人と前年の31人から約39%減少しており、厚生労働省は、2025年6月に施行された改正労働安全衛生規則により事業場での重篤化防止対策が進み、死亡災害の防止が一定程度図られたためと考えられるとしています。発生件数が増える中でも死亡者数は減少しており、早期発見と迅速な対応の重要性が改めて示されました。

なお職場に限らず、2025年5〜9月の熱中症による救急搬送者数は全国で10万510人と、統計開始以来初めて10万人を超えました(総務省消防庁)。こちらは、日常生活を含む全国の救急搬送者数であり、社会全体で熱中症による健康被害が深刻化していることが分かります。こうした状況から、企業としても熱中症対策に万全を期す必要性が一段と高まっています。

熱中症の症状と重症度

軽症ではめまいや立ちくらみ、筋肉の痛み(こむら返り)などが現れ、現場での応急対応も可能とされます。中等症になると頭痛、吐き気、倦怠感や集中力や判断力の低下などをきたすこともあり、医療機関での診察が必要になります。さらに重症になると、意識障害、手足のけいれん、運動障害、高体温などの症状を認め救急搬送が必要です(医学的にはより細かく1〜4度に分類されますが、本コラムでは概要を整理しました)。

熱中症を予防するポイント

特に以下の3つのポイントを意識しましょう。

  • 暑さを避ける
    屋内ではエアコンや扇風機を適切に使い涼しい環境で過ごしましょう。直射日光を防ぐために遮光カーテンやすだれを利用したり、風通しを良くする工夫も有効です。屋外では帽子や日傘を活用し、日陰を選んで行動します。服装も通気性のよい素材を選び、必要に応じてタオルを巻いた保冷剤や冷感タオルで首筋や脇の下などを冷やして体に熱を溜めないようにしましょう。炎天下での無理な作業や外出は避け、適度に休憩を挟むことも大切です。
  • こまめに水分補給
    喉の渇きを感じる前から、定期的に水分をとりましょう。高温環境での作業や運動で大量に汗をかく場合には、水分だけでなく塩分も補います。ただし、スポーツドリンクには糖分が多い製品があり、経口補水液は脱水時の補給を主な目的とするため、いずれも日常的に大量に飲むものではありません。屋外作業や運動時は、開始前に水分を摂っておくことも予防につながります。室内でも油断せず、常に飲み物を手元に置いて少しずつ補給する習慣をつけてください。なお、心臓病、腎臓病、高血圧症、糖尿病などで水分・塩分・糖分の制限を受けている方は、主治医の指示を優先してください。
  • 体調管理
    普段からバランスのよい食事と十分な睡眠を心がけ、暑さに負けない丈夫な体づくりを続けましょう。前の晩の深酒や寝不足、朝食抜きなどは熱中症を招きやすくなります。朝ごはんを抜くと体内の水分やエネルギーが不足し、暑さに対する身体の抵抗力が落ちてしまいます。夏場は特に生活リズムを整え、無理なダイエットや過度な飲酒は控えて、体調を万全に保つことが予防の基本です。

「熱中症かな?」と思ったときの応急処置

もし周囲の人に熱中症らしき症状が出たら、素早く対応しましょう。重症化を防ぐために初期対応のポイントを押さえておきます。

  • 意識の確認
    まず声をかけ、反応を確かめます。呼びかけに反応しなかったり受け答えがおかしい場合は早急に救急要請が必要になります。
  • 涼しい場所に移動し体を冷やす
    日陰やクーラーの効いた室内などの涼しい場所に運びましょう。衣服を緩め、身体から熱を逃がします。氷嚢や保冷剤をタオルで包んで、太い血管のある首、脇の下、太腿の付け根(鼠蹊部)に当てて冷やします。濡れタオルで身体を拭いて扇ぐなど、できるだけ早く体温を下げる工夫をします。意識がある場合は同様に涼しい場所に移動して体を冷やします。
  • 水分・塩分の補給
    自力で水が飲めない・吐き気がある場合は、医療機関への搬送が必要です。意識がはっきりして自力で安全に飲めるようなら、経口補水液やスポーツドリンク等で水分補給します(ただし基礎疾患などにより塩分や糖分の摂取量の調整が必要になる可能性があります)。一気に飲ませるのではなく、ゆっくり少しずつ飲んでもらいましょう。意識がもうろうとしている人に無理に飲ませてはいけません。
  • 症状の経過観察と医療機関受診
    応急処置後は楽な姿勢で安静にさせ、付き添って様子を見ます。症状が改善しない場合は、医療機関の受診が必要です。なお、一時的に良くなっても、後からまた症状が出ることもあります。不安があれば医療機関で診察を受けてください。


画像引用元:厚生労働省「熱中症が疑われる人を見かけたら」

職場における熱中症対策義務と実践ポイント

働く現場での熱中症の重篤化を防ぐため、2025年6月に施行された労働安全衛生規則の改正省令により、特定の条件下で作業を行う事業者は、熱中症の早期発見と重篤化防止のための措置を講じることが義務づけられました。2026年はこの義務化から2年目のシーズンにあたります。対象となるのは、事業場のWBGTが28℃以上(または気温31℃以上)で、1時間以上連続、または1日4時間超にわたる作業です。なお、対象は日常的に行う作業に限りません。臨時に行う作業であっても、条件を満たす場合は対象となります。該当する職場では以下の対策が義務づけられています。WBGTとは、気温に加えて、湿度、日射・輻射など周辺の熱環境を取り入れた指標で熱中症予防に有用です。

  1. 報告体制の整備と周知
    作業中に労働者自身が熱中症の自覚症状を感じた場合や周囲の人が異変に気付いた場合に、すぐに所定の担当者へ連絡・報告できる体制を事前に定め、関係作業者に周知すること。
  2. 熱中症悪化防止のための手順作成と周知
    作業者に熱中症の症状が出た際に重症化を防ぐための具体的な措置と手順を事業場ごとに定めて、関係作業者に周知すること。例えば「異常を認めたらただちに作業から離脱し安全な場所で休ませる」「冷却グッズで身体を冷やす」「必要に応じて速やかに医師の診察を受けさせる」「緊急搬送先(病院)や救急車の連絡先を用意しておく」等、一連の対応フローを決めておきます。

これらの義務に違反した場合、企業には6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金という罰則が科される可能性があります。

なお、これらの体制や手順を確実に機能させるための労働衛生教育(管理者・作業者への教育)は、後述の新ガイドラインで実施が推奨されており、取り組む意義があります。

2026年策定の「職場における熱中症防止のためのガイドライン」

2026年3月、厚生労働省は「職場における熱中症防止のためのガイドライン」を新たに策定しました(令和8年3月18日付け基発0318第1号)。熱中症リスクに応じて行うことが望ましい具体的方法を示し、事業者が業種・業態に応じて適切に選択して取り組めるようにしたものです。これに伴い、従来の「職場における熱中症予防基本対策要綱」は廃止されました。

新ガイドラインでは、従来の義務(報告体制・措置手順・周知)に加え、次のような対策が体系的に整理されています。

  • WBGTの把握とそれに基づくリスクの評価
  • 暑熱順化(体を段階的に暑さに慣らすこと。新規入職者や休み明けの方は特に注意)
  • プレクーリング(作業開始前や休憩中に深部体温を下げること)
  • 作業前の体調確認と労働衛生教育

なお、高年齢の作業従事者については、暑さや水分不足に対する感覚や身体の調節機能が低下している場合があるため、作業時間の短縮や身体作業強度の低減等を検討するなど、特に留意することとされています。厚生労働省の確定値では、2025年の職場での熱中症による死傷者は50歳代以上が全体の約52%を占め、死亡者では約84%を占めています。一方で、死傷者はいずれの年齢層でもみられるため、年齢を問わず基本的な対策の徹底が必要です。

また、糖尿病や高血圧症など、熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病の治療中等の方については、産業医や主治医等の意見を勘案し、必要に応じて適切な措置を講ずることが新ガイドラインに示されています。実際、2025年の職場での熱中症による死亡事例19件のうち、こうした疾病や所見を有していることが明らかな事例は9件ありました。実務上は、本人の健康状態や治療状況、作業内容などを踏まえ、必要に応じて産業医等の意見を聞きながら、個別に対応を検討することが重要です。その際は、健康情報の取扱いと本人のプライバシーへの配慮も大切です。

あわせて、厚生労働省と中央労働災害防止協会等は、令和8年(2026年)も「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施しています。期間は5月1日から9月30日までで、7月は重点取組期間とされています。同キャンペーンでは新ガイドラインに基づき、WBGT値の把握とその値に応じた対策、重篤化防止のための体制整備・手順作成・周知、熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病を有する方への医師等の意見を踏まえた配慮が重点的に呼びかけられています。

現場で実践すべき具体策は何か?

作業環境の「暑さ」を見える化
暑熱作業を行う場所では、JIS規格に適合したWBGT指数計などを用いて作業場所の暑さ指数(WBGT値)を把握し、その値や作業内容に応じて、休憩や水分・塩分補給、作業時間の短縮、必要時の作業中断を検討できるようにしましょう。WBGT値は時間帯や天候、風通し、熱源の有無などで変化するため、必要に応じて繰り返し確認します。空調のあるオフィスなどの屋内でも油断は禁物です。日常的には温湿度計などを活用して室温や湿度の変化を確認し、冷房や除湿を基本に、送風の併用などの環境改善につなげましょう。空調が効きにくい場所や、西日が強く当たる場所、機器からの発熱が多い場所などでは、必要に応じてWBGT値の確認も検討するとよいでしょう。

作業計画の工夫
炎天下での作業や重労働は、可能であれば気温の低い朝夕にシフトする、休憩回数を増やす、作業時間を短縮するなど検討しましょう。暑さに慣れていない時期には「暑熱順化」の期間を設け、段階的に作業量を増やしていくよう配慮します。休憩所には冷房や扇風機を設置し、冷たい飲み物や塩タブレットなどを用意して誰でも使えるように整備します。

作業服や保護具の見直し
夏場には通気性の良い作業着やファン付きウェアの導入などで作業者の体感温度を下げる工夫をしましょう。

従業員の体調管理への配慮
熱中症は体調が大きく影響します。朝の体調確認や声かけを行い、少しでも具合が悪い人がいたら無理をさせない職場の雰囲気づくりが大切です。現場で、気温・WBGTや休憩状況を管理したり、従業員から報告を受けたら迅速に対応措置を取れる体制を整えておくと安心です。

おわりに

熱中症対策は、一般社員から管理部門、経営層まで職場全体で取り組むべき重要課題です。日々の予防策(暑さを避ける・水分補給・体調管理)を徹底するとともに、必要時の応急処置を知っておくことが、一人ひとりの健康を守ります。そして職場では、法令で義務化された体制整備を実施し、現場で実践的な対策を講じることが求められます。

2025年6月に施行された熱中症対策の義務化は2年目を迎え、2026年3月には新ガイドラインも策定されました。この夏に向けて、自社のどの作業が義務化の対象(WBGT28℃以上または気温31℃以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間を超える作業)に該当するかを確認するとともに、体調不良者が出たときに誰に報告し、誰が判断し、必要に応じてどのように医療機関につなぐかといった手順が実際に機能するか、あらためて確認しておくことをお勧めします。十分な対策を行い、暑い季節を安全に乗り切りましょう。

職場の熱中症対策は、衛生委員会での審議や産業医の職場巡視とあわせて進めることで、より実効性が高まります。産業医の活用方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

産業医の選任・健康管理のご相談

中央総合産業医事務所では、産業医の選任・交代のご相談から、健康診断の事後措置、ストレスチェックの運用、メンタルヘルス不調による休職・復職対応まで、企業ごとの実情に応じてサポートしています。

熱中症については、YouTube動画でも解説しています。
映像やスライドで確認したい方はこちらからどうぞ。

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