「6月病」とは?産業医が解説する心身の不調のサインと相談の目安

6月になると、「朝、仕事に行くのがつらい」「疲れが取れない」「気分が落ち込む」といった不調を、いわゆる「6月病」と表現することがあります。

ただし、「6月病」は医学的な診断名ではありません。新年度の環境変化によるストレスや疲労の蓄積、生活リズムの変化、気候の変化などを背景に、6月頃にみられる心身の不調を指す通称です。

こうした不調の背景には、適応障害やうつ病など、医療機関での評価や治療が必要な状態が含まれていることもあります。大切なのは、「6月病かどうか」を自己判断することではありません。いつもと違う変化があるか、その状態がどの程度続いているか、仕事や日常生活にどの程度影響しているかを確認することが重要です。

目次

「6月病」は正式な診断名ではありません

「6月病」という言葉は、不調に気づくきっかけとして使われることがあります。しかし、それ自体は正式な病名ではありません。

4月の入社、異動、昇進、配置転換などの環境変化のあと、少し遅れて疲労やストレスの影響が表面化することがあります。さらに、生活リズムの乱れや気候の変化が重なることで、心身の不調を感じやすくなることもあります。

そのため、「6月病だから大丈夫」「そのうち自然に治るはず」と決めつけるのではなく、実際にどのような変化が起きているかを丁寧にみることが大切です。

心身の不調は、気分だけに現れるとは限りません

心身の不調というと、気分の落ち込みや不安を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、実際には行動や身体症状の変化として現れることもあります。

例えば、次のような変化です。

  • 気分が沈む、不安や焦りが強くなる
  • 意欲が出ない、集中できない
  • 遅刻や欠勤、仕事上のミスが増える
  • 人とのやり取りを避けるようになる
  • 眠れない、食欲が落ちる
  • 疲労感が続く
  • 頭痛、胃の不調、動悸などが続く

こうした症状があるからといって、直ちに特定の病気と判断することはできません。ただし、症状の程度が強い場合、複数の変化が重なっている場合、周囲から見ても「いつもと様子が違う」状態が続いている場合には、無理を続けていないか確認する必要があります。

医療機関受診の目安

気分の落ち込みや不眠などが続き、1~2週間ほどたっても改善しない場合は、医療機関への相談を検討する目安の一つです。

ただし、相談の必要性は期間だけで決まるものではありません。症状の強さや悪化の程度、仕事や日常生活への影響もあわせて判断することが大切です。

例えば、症状が出てから数日であっても、次のような状態であれば早めの相談が必要です。

  • 出勤できない
  • 仕事を進められない
  • 食事がほとんど取れない
  • ほとんど眠れない

反対に、症状が軽く見えても、徐々に悪化している場合や、休日に休んでも回復しない場合には、放置せず相談を検討しましょう。

また、「消えてしまいたい」「これ以上はもう限界だ」といった思いがある場合は、ひとりで抱え込まず、できるだけ早く医療機関に受診・相談することが大切です。

本人に必要なのは「我慢」よりも早めの相談

不調を感じたとき、まず大切なのは、睡眠時間や休息を確保し、仕事以外の予定を詰め込みすぎないようにすることです。生活リズムを整え、無理を続けないことが基本になります。

ただし、セルフケアだけですべてを解決しようとする必要はありません。休むべきか、働き続けてよいかを、不調の渦中にいる本人だけで判断するのは難しいことがあります。

また、会社側も、医学的な情報がないまま適切な対応を判断するのは容易ではありません。医療機関や産業医の意見も踏まえることで、業務量の調整、残業の制限、一時的な配置上の配慮、休業の要否などを検討しやすくなります。

仕事への影響が出ている場合は、相談の窓口や流れが職場によって異なることを踏まえつつ、職場で利用できる相談先や社内外の相談窓口、産業医相談の仕組みなどにつながることを検討します。診断や治療が必要な場合には、心療内科や精神科などの医療機関への受診を考えましょう。

管理職は「病名」ではなく「変化」に着目する

部下の不調が気になるとき、上司が病名を推測したり、「精神的に弱い」「やる気がない」と評価したりするのは適切ではありません。

まずは、客観的に確認できた変化をもとに声をかけることが大切です。

例えば、次のような伝え方があります。

  • 「最近、遅刻が続いているけれど、体調は大丈夫ですか」
  • 「以前より疲れているように見えるので、少し気になっています」

無理に事情を聞き出すのではなく、本人の話を聴き、必要に応じて社内のルールに沿って人事や産業保健スタッフにつなぎます。

また、本人のセルフケアだけを求めるのではなく、業務量、期限、役割分担、人間関係など、職場側で調整できる要因がないかを確認することも重要です。休業、復職、就業上の配慮は、管理職が単独で決めるのではなく、本人の意向、必要な医療情報、業務内容、社内制度を確認しながら、人事や産業医などと連携して検討します。

まとめ

「6月病」という言葉は、不調に気づくきっかけにはなりますが、正式な病名ではありません。

大切なのは、季節名や通称に当てはめることではなく、次の3点を確認することです。

  • いつもと違う変化があるか
  • その状態が続いたり、悪化したりしていないか
  • 仕事や日常生活に支障が出ていないか

こうした点に当てはまる場合は、一人で抱え込まず、早めに相談することが大切です。気になる不調があるときは、無理に一人で判断せず、職場で利用できる相談先や産業医相談の仕組み、必要に応じた医療機関など、利用しやすい相談先につながることを考えてみてください。

早めの気づきと対応が大切です。

関連する監修記事

本記事のテーマに関連して、中小企業の経営者や人事・労務担当者向けのビジネスメディア「Kalep,」に掲載された記事の監修も担当しました。 

※会員向け記事です。

その不調、実は「6月病」? 産業医が教えるサインと心のケア術

💡さらに詳しく知りたい方へ
本コラムの内容は、当事務所が運営するYouTubeチャンネルでも、分かりやすいイラスト付きで解説していますのでぜひご覧ください。

▼ YouTube動画はこちら

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次